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【2006】

ラジオ『円都通信』 岩井俊二監督との新春対談 (JFN系列)
 ・1月08日(日) 午前4時〜4時半

 ・1月15日(日) 午前4時〜4時半
 ・1月22日(日) 午前4時〜4時半 ・・・録音失敗しました。 BBSに詳細レポしてくださっていますので、ご覧下さい。
 ・1月29日(日) 午前4時〜4時半
 ・2月05日(日) 午前4時〜4時半

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・1月29日(日) 午前4時〜4時半

円都通信。 本日は、映画監督・岩井俊二と、俳優・三上博史が 今、そして今後を語る 岩井俊二と三上博史の 新春対談第4話。 た〜っぷり(力瘤っ)! お送りします。

BGM:マイウェイ他(YEN TOWN BAND)


岩井監督

結構、役者さんとか海外を拠点にしている人がいるっすよね、生活の。

 

三上さん

なんだろな? いろんな意味で。 1つは人目が楽だ、っていうこともあるし。 それよりも自分たち役者がアーティストと思ってるんじゃないけど、アーティストに優しいじゃないですか。 優しいと言うか、楽。 どこにいてても。 どんな職業の人でもいられる、っていうか。 東京、色んな職業の人いるんでしょうけれど、日本って、結構つらかったりするね。 あの人何やってんだろ?とか、なんか覗かれちゃうすよね。

 

岩井監督

横見出し?にすると

 

三上さん

そぅそぅそぅそぅ

 

岩井監督

(笑)

 

三上さん

80年台から移り住んだ友人たちがどんどん帰ってきていますよね。 不思議ですね。 NY組、ロス組、パリ組、ロンドン組、みんな帰ってきて。 その期間が飛んでいるから、だいたい80年台みたいな(笑)空気になってくるんですよね、自分の周りが。 不思議だな〜、と思って。 もう25年かぁ、って。 まわりが80年台な感じですよ。

 

岩井監督

今になって?

 

三上さん

色んなつまんない要素があるんですよね。 両親がきつくなってくる、とか。 あと自分の食の嗜好が日本に向いて来たりとか、あと、国の補償とか(笑)。 いろんな事がぐちゃぐちゃになってきて。 もぉ帰ってきたほうが楽!とか。 そういうこともあるのかな。 持ち帰ってくるものが面白いものが一杯あるから。 僕はしょっちゅう出てはいるけれど、住んだ事はないから。 僕にとっては面白いですね。 ”住む”、と ”訪ねる”、じゃえらい違いだから。 ”住む”、っていうのは結構大変だよね、全てやらなきゃいけなかったら。

 

岩井監督

”住む”、って環境においては、日本が一番優しいんじゃないですかね? きっと。 アメリカとかだって、警察怖いし。 問答無用じゃないですか? どっか。 あんなとこ、アメリカだけじゃなくて、ほとんどそうじゃないかな? 大体みんな軍隊があるでしょ? そういう意味で言うと自衛隊くらいじゃないですかね? 国民に気を使いながら、やらさせてもらっています、みたいな顔してる(笑)。 軍隊、軍隊ですよね、普通どの国行っても。

 

三上さん

(笑)有無を言わさない。

 

岩井監督

有無を言わさない(笑)。 大体、道、よけないよね。 行進してて。

 

三上さん

すごいよね

 

岩井監督

普通の市民がいたからって、すっと身をかわしたりしないですよね(笑)。 そこどけ、そこどけ、みたいな雰囲気で、どっちかって言うと。 アジアとかに行っても、警官が普通の市民をボコボコ叩いたりするのをよく見るし。 どこ行っても怖いな、って思ったりするけど。 スワロウテイルを作った頃の気分っていうのは、日本人って脆弱だなって印象あって。 もうちょっとタフで良いのに、ってそういう思いで作った映画だったんですけど。 それは変わってないな、っていう感じは凄いしますね。

 

三上さん

全然変わってないですよね

 

岩井監督

あの頃よく、色んなところでしゃべってたんだけど、すごい病院ぽいって言うか、治療受けてるような感じで。 点滴取り替えるのも看護婦さんにやってもらっているような状態っていう感じで。 未だに続いている、っていうか。 それより、自分でとりあえず生きている、というか、病院とか学校の延長線上みたいな感じで。 社会に対して あれしてくれない、これしてくれないみたいな感覚って、強いのかな、って。

 

三上さん

そうではなかった時期って、あったのかな? 国民性のもの、、、がしないでもない。

 

岩井監督

日本って言う単一民族、っていうか あ・うんで分かるだろう、、、と言うか。

 

三上さん

ず〜っとあったわけでしょ?

 

岩井監督

なんかな。

 

三上さん

脈々と。

 

岩井監督

昔から、理科とか、そっちの方が好きなタイプで。 文学とかに傾倒したのも中学高校に入ってからで、それまでは どっちかと言うと、学者になりたいタイプだったんで。 出来るだけ科学で解決しよう、とする方で。 あんまりスピリチャルなものよりは まず科学で全部解決してしまって、それで解決しきれないものに スピリチャルなものを見出そう、とするタイプなんで。 だいたい味気ないくらいに解決しちゃう、っていうか。 人間って、何のために生きているのか、とか科学的な方面から裁断してしまうと、意外と人間本位じゃないところで切り捨てちゃうと 味気ない、っちゃ味気ないっていうか。 色んな解釈あると思うんですけど。 たとえばブラックホールとか、ものすごい超エネルギーのきついところ 宇宙って、存在しているわけじゃないですか。 それと比較しちゃうと、ちょっとした埃くらいな感じですよね、人間って。 そこに意味を見出そうとしても、だから?みたいな話になっちゃいますよね。 ぐるぐるぐるぐる。 人間って、何で生きているんだろ?とか、何が基準で生きているんだろ? とか。

 

三上さん

そういう意味では、作品作り、って、結構生み出す作業じゃないですか。 そういうのって、そういう風に思っちゃうと、何もしたくない、というか(笑)。 どっから湧き上がってくるんだろうね? 使命感でもなんでもないじゃないですか。 やらずにはおれないことなのかな? 岩井さんにとって。

 

岩井監督

意外とそのモチベーションから入ると、しないですね。 次の仕事やろうと思って、最初やっぱり最近だと1ヶ月2ヶ月平気で、そっから気持ちが逃げちゃう、と言うか。 何でやらなきゃいけないんだろ? みたいな感じ。 のめりこんで、気がつくと勝手に体がそっちもとめる、ってか。 気がつくと熱中してるって言う感じかな。 意味を最初考えようとしちゃうと何もする気になれないというか。

 

三上さん

その感覚、ってか、熱中するまでの間隔って、どんどん長くなってくるじゃないですか(笑)。 

 

岩井監督

ありますね(笑)。

 

三上さん

絶対なると思うんですよね。 そこらへんをどうやって自分を追い込んでいくか、ってか、種火をつけてく作業、っていうのが ナカナカ出てこない、ってか。 僕は、メインが役者の仕事なので、ベルトコンベアのように 仕事が入ると 有無を言わさず撮影現場に行き、演じるわけだから そんなにアレなんですけれど、1から作っている監督とか作家さんとか、それを盛り立てる、自分を盛り立てる、だけで大変だったろうな、って思って。

 

岩井監督

最初の頃なんて、やっぱり白紙

 

三上さん

何にも無いわけですね

 

岩井監督

何にも無いから、人間的にも あらゆる自信を失っている状態。 そんな時、インタビューとかされても自信が無くて何も答えられない、ってか。 意外と作品を作り上げたときの状態って、作品が公開されているときが丁度そのタイミングなんです。 こっちは作り終わって何ヶ月もたってて、丁度その次の作品の入り口に立っているわけですから。 その頃のインタビューって、一番きつい。

 

三上さん

あ? きつい? 一番健康なのかと思ってた。 あ、そぉなんだ。

 

岩井監督

俺は何も出来ない人なんで、ってくらい落ちちゃってるから。 作りあげた直後くらいのインタビューはいぃんですよ。 嬉しくてしょうがないから。 「できた、できた」っていう感じで。

 

三上さん

そこから何ヶ月か経って 人の目に触れる頃、ってのが。

 

岩井監督

公開される頃って、次に入ってるんで。 そうすると、いや〜、俺に聞かれても

 

三上さん

なるほど。

 

岩井監督

って感じくらいまで落ちちゃってる。 そっから、まただんだん。 その頃、一番やらない事って、前の作品を振り返る、ってこと、一番やらないんですよね。 ものすごい劣等感に陥るんで。

 

三上さん

今の自分に対して、ってこと?

 

岩井監督

出来上がったものと 白紙だから。 百点取ったやつと白紙とは、って。

 

三上さん

逆に前作で出来上がったんだから、次にも向かえるだろう っていうのは無いですか?

 

岩井監督

逆に無いと言うか。 前作はやっちゃいけないよ、っていわれてる、って感じだから。 これ、だめね、だめね、見たいな感じ。 前作何やってたかな?って感じの時あるけど。 一番接触しないのは前作。 前の作品のビデオ見たりとか、音楽とか。 音楽、聴かないですね。 聴けない、ってか。 一番楽しめないジャン、みたいな感じで。 作ってる当事者だけど、なんか、観てはいけない、っていう。

 

三上さん

ちょっと回路が違うのかもしれないけど 僕は、新しい作品に入るときって 重ねて仕事をした事がないので  一個一個、独立しているじゃないですか。 クランクインの前日って、ものすごい緊張するんですよね。 どうなっちゃうんだろう、と思って。 すごい不安で、不安で。 何が一番不安だ?って自分で検証していくと、果たしてこれが出来んのかな?って。 この役が新しい役が出来んのかな? 演じられるのかな?って 凄い不安なんですよね。 そういう時って必ず前の日眠れないから。 遠い作品じゃなくて、最新作を引っ張り出してくるんですよ。 そうして ずっと観てると、大丈夫、大丈夫、って。 次の日、ザって。 それはもちろん同じ事はしないですけど、これが出来たから、この新しいことが出来る、新しいところにいける、って、あおってあおって初日を迎える、ってことが多いですね。 怖いですよね。

 

岩井監督

若い頃はどうでした? 若い頃、そんな感じだった? 向こう見ずだった、とか。

 

三上さん

そういう時期、なかったですね。 気が小さいので、いつもいつもこれで失敗したら終わり、って。 何が失敗なのか分かんないけど、これで失敗してたら終わり、ってのは、ず〜っと思ってたかもしれないですね。 やってる最中は これが最後だ、って思ってた。 この作品が最後だ、って。 たまたま次の作品が決まってるときもあるんだけど、その次が最後だ、って。 自分から生み出す仕事じゃないんだよね。 声掛からないとなんとも仕事になんないと言うか。 だから、あわせ技でプロデュースとかもしてみたいと思ってるんだけど。 そのほうが健全かな?と思って。 待ってるだけ、ってね。

 

岩井監督

そうだな、役者稼業のポジションって、そういうものだから。 そこは結構、俺とかやっぱり卑怯なんだろな。 最初に場所作りみたいなこと、やってしまがちですね。 普通だと映画監督っていうのは、監督だけやってるようなもんだけど、だんだん心もとなくなってくると、より安定して作るためには、その前からやんないとって だんだん気がつくとプロデュース的なものに変わっていくでしょ?

 

三上さん

それはやっぱり、自分の居場所をいやすくするために そういう場を作っていく、ってか、そういう状況、セッティングしていくって事なのかな?

 

岩井監督

うん、そうですね。 そこは直感と本能の赴くままと全く対極な考え方があって。

 

三上さん

そうだね、そうだね

 

岩井監督

割と石橋を叩いて渡る方で、そこらへんは。

 

三上さん

自分に対するプロテクションだったりすることも大きいのかな?

 

岩井監督

うん、なんていうんだろな? 自分に自信がないわけじゃないんだけど、仮に自信があってもこの仕事って、博打みたいなもんじゃないですか。 作品一個だけだったら、絶対成功するかどうかわかんないわけで。 3つくらい用意しとけば、なんとかなるかな? とか、そういう考え方、というか。 最初が『love letter』とかが最初の映画になるんだろうけど。 企画的には幾つも持っていて。 ほぼ同時に売り込みかけてて。 どれからでもいける状態を作ってて。 あんまりデビューしようとしている監督じゃない傾向と言うか。 一個転んでもまだあるし、みたいな、4戦くらいでけりつけよう、みたいな最初のイメージ、ありましたね。

 

三上さん

どっから行っても良いぞ、ってな。

 

岩井監督

4回やれば、完全に転びきってリタイアって事は、ないだろう、みたいな。 1個か2個じゃ、怖くて出来ない、って。 観客から、評論家から拒否されて、終わって行った人って、沢山見てるから。 大体みんな、一個しか持って無かったよな、っていうようなのあった気がするんですよね。 割と1つのカラーを自分で持つ事 潔しとしているような人も多いから。 そういうのが自分の中でよくわかんなかった、っていうか。 自分が映画を趣味でみる場合って、色んなもの見てるわけだから。 それにシンクロしてれば良いわけで。 別になんか 自分の作はこうです、って言ってしまったら終わり、みたいな。 できるだけ分からなくしよう、とか。

 

三上さん

すごい 現代ぽいって言うか。 わざわざ ”はんこ”を押す人もいるしね。 僕はこれですよ、って作品につける人もいるし。 それはあんまり好きじゃないですね。 だって、日常生きてると同時多発でほんとに色んな目にあって色んな事考えてるわけで。 好きなものもね、幅広かったりするわけだから。

 

岩井監督

そういう意味で言うと、世間から見られているイメージって、意外と受身で、世間が見ているからその色形になってる、って世間は思っていると思うんだけど 自分 考えると、場面場面で結構フライングなことやってる気がする、ってか。 自分で調整してきた感じ。 ここは行き過ぎだなとか、ここは引こう、とか。 客観視しながら やってしまったな、みたいな。 毎日そのことについて考えているから。 そこに関して無頓着でいられたか、っていうと それが普通かな、って思うけど。

 

三上さん

片や、持ち込まれたものを専門にダダダダってやるタイプの人もいるじゃないですか。 それも凄いよね(笑)。 かつての昭和のスタジオの頃って、ものすごい数、作ってたじゃないですか。 企画先行でどんどんどんどん撮っていくって言う。 それまた、別物ですよね、きっとね。 やっぱり自分で書いて撮る、ってのが理想のような気がするけど。

 

岩井監督

個人的には演出やる、とか企画作ってる、とかじゃなくて、単純に映画を作っている って映画に取り組もうと思ってて。 ただそれだけなんですけどね。 作って見せる、作ってみせる、ってだけ。 一番シンプルに考えよう、っていうか。 そのために必要な事を全部やる、って。 映画作りって、そこが面白かったりするんで。 自分で作って、お客さんに観てもらって。 出来るだけそれに携わってたほうが楽しいから、それが良いんじゃないかな、って思ってるだけで。 そのプロセスとして脚本ってあるんで。 脚本って苦手なんですよ。 撮影現場入ったり、編集とか、楽しくて仕方ないんだけど、脚本だけはゼロからの妊娠期間みたいなものだから。 つわりとか陣痛とかみたいなもんなんで、決して楽しくは無いんだけど、それがあるから、その後が楽しい、ってのもあるし。 意外と、役者さんとか他のスタッフとか 現場に気持ち込めて入ってくる頃って、脚本からやっていると、その前にもぅひと汗流しているような状態なんで、結構リラックスはしてるんですよね、監督としては。 それもまた良かったりするんだろうけど。 監督も同じようなそのテンションで合わせていっちゃうと、ものすごい緊迫してくるんだろうな、って。 先に試合終わらせているやつが一人いたほうが。

 

三上さん

でも、単純に肉体的には凄い大変だよね、現場って。 監督は(笑)。 凄いな、って思う。

 

岩井監督

監督、ってそうでもないんじゃないかな。

 

三上さん

そっかな?

 

岩井監督

カメラとか照明とか、もっと過酷な仕事してる人たちいるから。 監督って何も手に持ってないし。 座ったり立ったりしてるだけだから、そんなに大したことないと思うんですけどね。

 

三上さん

そうですか?

 

岩井監督

たまに現場で自分でカメラ回したりすることがあるんですけど、いや、半端じゃなくて。

 

三上さん

(爆)

 

岩井監督

やんなきゃよかった、って途中からほんと苦しくなってくるから。 肉体的に無理だ、これ、ていう(笑)。

 

三上さん

(笑) 腰、ガタガタになるんだよ。 スワロウの時もね、何度も回してたもんね。

 

岩井監督

やった、やった。

 

三上さん

あん中のね シーンとか。

 

岩井監督

取調室。

 

三上さん

そぅそぅ、取調室。 草履撮ってたじゃないですか。

 

岩井監督

あれ、なんで俺がまわしてたんだろ?

 

三上さん

2台一緒に回してた気がする。

 

岩井監督

2カメ体制だったから、二人いたんだけど。 どっちかのカメラマンがいなかったのかな?

 

三上さん

え? ここは撮る! とか言ったんじゃないの?(笑)

 

岩井監督

(笑) 手が足んなくなったんだと思うよね。 半分こっちやるわ、っつって。 そうだよな、まわしたな、最後。 たまにあるんですよね、カメラマンのスケジュールが合わなかったりすると しょうがないんで。 そこだけ他のカメラマン呼ぶんだったら、自分で回しときますわ、っつって。 やるともぉ、きついっすよ、あの仕事は。 これやってんのか、と思うと、とんでもない肉体の持ち主だな、カメラマンたちって、と思うし。 15キロから20キロくらいあるのかな? カメラって。

 

三上さん

そうですよね。

 

岩井監督

一日中担いだりするとね、ほんともぉボロボロになる。

 

三上さん

すごいよね。

 

(中略)来週は、岩井俊二と三上博史の 新春対談最終回、お送りします。 お楽しみにっ!

 


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